「社内の連絡をいまだにメールで回している」「LINEで仕事の連絡をしているが管理が雑然としてきた」——そろそろビジネスチャットを導入しようと思っているが、種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない、という会社は多いです。
結論から言います。中小企業がビジネスチャットを選ぶ基準は「誰が・どんな端末で・どんな目的で使うか」の3点で決まります。Slackが優れているからSlack、TeamsはMicrosoftだから安心、という選び方では必ず「現場が使わない」という失敗が起きます。
この記事では、Slack・Microsoft Teams・Chatwork・LINE WORKS・Google Chatの5つを中小企業の視点から正直に比較します。料金・機能・使い勝手のリアルな評価と、規模・業種別のおすすめ選び方をまとめました。
この記事でわかること
- ビジネスチャット5選それぞれの特徴と正直な評価
- 無料プランと有料プランの料金比較
- 規模・業種・使い方別のおすすめ選び方
- メールからの移行で起きがちな失敗と防ぎ方
- 今日から始められる導入ステップ
ビジネスチャットに切り替えると何が変わるか
まず「なぜビジネスチャットに切り替えるのか」という前提を整理します。メールで十分じゃないか、という声もありますが、メールとチャットでは情報の流れ方が根本的に違います。
メール文化の会社が抱える3つの問題
メールでの社内連絡が主流の会社には、共通して3つの問題が起きやすいです。
第一は情報の属人化です。「Aさんに聞かないと分からない」という状況が頻繁に起きるのは、情報がその人のメール受信ボックスに閉じているからです。チャットならチャンネル(部屋)で会話が共有されるため、誰でも経緯を確認できます。
第二は返信の遅さです。メールは1通のやり取りに「お世話になっております」「ご確認いただきありがとうございます」などの定型文が入り、簡単な確認でも往復に数時間かかることがあります。チャットなら「了解です」「確認します」の一言で済みます。
第三は検索のしにくさです。「あのときの見積もりの件、どのメールだっけ」という状況は誰もが経験しているはずです。チャットは検索機能が優秀で、キーワードで過去のやり取りをすぐに見つけられます。
ビジネスチャット導入で失敗する会社の共通点
ビジネスチャットを導入しても「結局メールに戻った」という会社には共通したパターンがあります。
最も多いのが「ツールを入れただけで運用ルールを決めなかった」ケースです。チャンネルの命名規則・何をチャットで何をメールで送るかのルール・返信の期待値——こうした取り決めがないと、「チャットもメールも両方確認しなければならない」という二重管理状態になります。
次に多いのが「PCに慣れていない社員が置いていかれた」ケースです。IT習熟度が低いスタッフが多い職場でSlackのような英語UIのツールを入れると、「使い方が分からない」という理由で使われなくなります。
清算経理担当者LINEで社内連絡してるんですが、それじゃダメですか?みんな使えてるし、今更変えるのも面倒で……



個人LINEでの業務連絡は、プライベートと仕事の境界があいまいになる・退職後も連絡が来る・情報管理が難しいという問題があります。LINE WORKSならLINEと同じ操作感のままビジネス用の環境に分けられます。「変える手間」と「このまま続けるリスク」を比べると、早めに切り替える方が得です。
ビジネスチャット5選 比較一覧
主要5ツールを一覧で比較します。詳細は次のセクションで解説します。
ビジネスチャット5選 比較一覧
| ツール | 無料プラン | 最安月額 | 使いやすさ | 外部連携 | おすすめ対象 |
|---|---|---|---|---|---|
| Slack | ○ 履歴90日 | ¥925〜 | ★★★★☆ | ★★★★★ | IT系・スタートアップ |
| Microsoft Teams | ○ 履歴60日 | ¥540〜※ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | Microsoft 365ユーザー |
| Chatwork | ○ 履歴40日 | ¥700〜 | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | 非IT系・中小企業全般 |
| LINE WORKS | ○ 30名まで | ¥300〜 | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | 現場スタッフが多い業種 |
| Google Chat | △ Workspace内 | ¥680〜※ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | Googleユーザー |
※Teams・Google ChatはMicrosoft 365・Google Workspaceの月額(年額換算)。2026年5月時点。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
各ツールを詳しく見る——正直な評価
Slack——外部連携の幅と検索性が業界最強
Slackは2013年にアメリカで生まれたビジネスチャットで、世界で最も多く使われているツールのひとつです。チャンネル制を採用しており、プロジェクト・部門・テーマごとに会話を分けて管理できます。
最大の強みは外部サービスとの連携数の多さです。Google Drive・Zoom・GitHub・Salesforce・Notionなど2,000以上のアプリと連携でき、「作業はSlackの中だけで完結する」という使い方が可能になります。IT系・スタートアップ・開発チームに特に支持されているのはこの連携の豊富さが理由です。
検索機能も優秀で、過去の会話・ファイル・リンクをキーワードで素早く見つけられます。「あの話どこでしたっけ」という問いに、数秒で答えが出ます。
料金: 無料プランはメッセージ履歴90日・ストレージ5GB。有料のプロプランは年額契約で月925円/ユーザー。
デメリットは、UIが英語ベースで設計されており、「操作が直感的でない」と感じる非IT系の担当者が多い点です。また無料プランはメッセージ履歴が90日に限られるため、過去の会話が消えてしまうリスクがあります。
向いている会社:IT系・スタートアップ・外部ツールとの連携を多用したい・エンジニアがいるチーム
Microsoft Teams——Office 365ユーザーなら追加費用ゼロで使える
Microsoft Teamsは2017年にMicrosoftがリリースしたビジネスチャット兼ビデオ会議ツールです。最大の特徴はMicrosoft 365(旧Office 365)との深い統合です。Word・Excel・SharePoint・OneDriveとシームレスに連携しており、ファイルをTeams上で開いて共同編集するといった使い方が標準でできます。
すでにMicrosoft 365を契約している会社は、追加費用なしでTeamsを使えます。「新しいツールに費用をかけたくない」「既存のOffice環境をそのまま活かしたい」という会社には、最も現実的な選択肢です。
ビデオ会議機能も充実しており、最大1,000人参加のオンライン会議が開けます。コロナ禍以降に急速に普及したのは、この会議機能の完成度の高さが理由です。
料金: 無料プランあり(メッセージ履歴60日)。Microsoft 365 Business Basicは月540円/ユーザー(年額)でTeams含む。
デメリットは、機能が多すぎてシンプルなチャットツールとして使おうとすると「どこに何があるか分からない」と感じやすい点です。チャット・会議・ファイル管理・タスク管理が全部入っているため、使い方の習熟に時間がかかります。
向いている会社:すでにMicrosoft 365を使っている・ビデオ会議を頻繁に使う・中〜大規模の組織
Chatwork——国産で最もシンプル・中小企業に馴染みやすい
Chatworkは2011年に国内でリリースされた、日本生まれのビジネスチャットです。現在は国内導入社数40万社以上(2024年時点)と、中小企業を中心に広く普及しています。
最大の強みはシンプルさと日本語対応の完成度です。メッセージ送信・ファイル添付・タスク管理・ビデオ通話の基本機能が日本語で直感的に使えます。「ITに詳しくないスタッフが多い」「とにかくシンプルに使いたい」という会社に最も向いています。
タスク管理機能が内蔵されているのも特徴で、会話の中で「〇〇さん、これお願いします」とタスクを作れます。別途タスク管理ツールを用意しなくても、Chatworkだけで基本的な業務管理が回せます。
料金: 無料プランはメッセージ履歴40日。有料のビジネスプランは年額契約で月700円/ユーザー。
デメリットは、外部サービスとの連携がSlackに比べて少ない点です。「ツールを連携させて自動化したい」という用途には向きません。あくまでシンプルなコミュニケーションツールとして使うのが正解です。
向いている会社:IT習熟度が低いスタッフが多い・シンプルに使いたい・国産ツールにこだわりがある・中小企業全般



Chatworkって、Slackと比べて機能が少ない分だけ物足りなくなりませんか?



社内連絡のメール置き換えが目的なら、Chatworkで十分すぎるくらいです。「機能が少ない=物足りない」ではなく「必要な機能だけある=迷わず使える」という見方が正解です。外部ツール連携や自動化をどんどん使いたいIT系の会社ならSlackが向いていますが、そうでなければChatworkのシンプルさは強みになります。
LINE WORKS——現場スタッフが多い業種に圧倒的に強い
LINE WORKSはLINEのビジネス版で、個人LINEと同じ操作感でビジネスチャットが使えるサービスです。飲食・小売・建設・介護など、スマートフォンを主な端末として使う現場スタッフが多い業種に特に強いです。
最大の特徴は「LINEを使ったことがある人なら即日使える」という導入のしやすさです。新しいツールの操作を覚えさせるトレーニングコストがほぼゼロで済みます。また、個人のLINEアカウントと連携することで、取引先や顧客との連絡もLINE WORKS上で一元管理できます。
スタンプ・既読確認・グループトーク・掲示板など、LINEでお馴染みの機能がそのまま業務に使える形で提供されています。
料金: フリープランは30ユーザーまで無料・ストレージ5GB。有料のライトプランは月300円/ユーザー(年額)。スタンダードプランは月600円/ユーザー(年額)。
デメリットは、外部システムとの連携がSlackやTeamsに比べて限定的な点です。「ツールを繋いで業務を自動化したい」という用途には向きません。シンプルな連絡ツールとしての用途に特化しています。
向いている会社:飲食・小売・建設・介護など現場スタッフが多い業種・スマートフォン中心の操作・LINEに慣れたスタッフが多い
Google Chat——Googleワークスペース利用中なら自然な選択肢
Google Chatはメッセージ・スペース(グループ)・ビデオ通話を一体化したGoogleのビジネスチャットツールです。Google Workspaceに含まれており、GmailやGoogleドライブを日常的に使っている会社には自然な選択肢です。
Googleドキュメント・スプレッドシート・ドライブとの連携がシームレスで、ファイルをChat上で共有してリアルタイム共同編集するといった使い方が快適です。
料金: Google Workspace Business Starterに含まれ、月680円/ユーザー(年額)。ChatだけのためにGoogle Workspaceを契約するかは費用対効果で判断が必要です。
デメリットは、チャット機能だけを見るとSlackやChatworkと比べてシンプルすぎる点です。チャンネル管理・外部連携・通知設定の細かさはSlackに劣ります。「Gmailをすでにビジネスで使っている」という会社以外には積極的に選ぶ理由が少ないです。
向いている会社:Google WorkspaceですでにGmailを使っている・Googleドキュメント・スプレッドシートを多用する
料金を徹底比較——無料プランでどこまで使えるか
無料プランの制限比較
※2026年5月時点。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
5ツールの中で最もコスパが高い無料プランはLINE WORKSのフリープランです。30ユーザーまで無料で、ストレージ5GB、チャット・音声通話・ビデオ通話がすべて使えます。メッセージ履歴の制限もありません。
ただし「30名を超えたら有料移行が必要」という点は注意が必要です。成長フェーズの会社は早めに有料プランへの移行コストを見ておいてください。
有料プランの最安はLINE WORKSのライトプランで月300円/ユーザー。次いでChatworkのビジネスプランが月700円/ユーザー、Slackプロが月925円/ユーザーという順です。
Microsoft TeamsはMicrosoft 365 Business Basicに含まれており、Teamsだけでなく1TBのOneDriveストレージ・Microsoft 365 Webアプリ・50GBのメールボックス(Exchange)がセットで月540円/ユーザーです。Teamsだけの費用として考えると実質最安に近いですが、Microsoft 365が不要な会社にとっては割高になります。



有料プランへの移行タイミングが分からないんですが、どう判断すればいいですか?



無料プランで「メッセージ履歴が消えて困った」「ユーザー数が上限に達した」「この機能がどうしても必要」という具体的な不便が出てきたタイミングで移行すれば十分です。それまでは無料で使い続けるのが正解。月額を払い始めるのは、払う価値を実感してからで遅くありません。
規模・業種・使い方別のおすすめ
5ツールの特徴を踏まえて、会社の状況別におすすめを整理します。
会社の状況別おすすめツール
IT系・スタートアップ・外部連携重視
→ Slack(2,000以上の外部連携・検索性が最強)
Microsoft 365(Office 365)をすでに使っている
→ Microsoft Teams(追加費用ゼロ・Office完全連携)
非IT系・シンプルに使いたい・中小企業全般
→ Chatwork(国産・日本語完全対応・タスク管理内蔵)
飲食・小売・建設・介護など現場スタッフが多い
→ LINE WORKS(LINE操作感・フリープラン30名・最安¥300〜)
GmailをGoogle Workspaceで使っている
→ Google Chat(追加費用なし・ドライブ・ドキュメント完全連携)
従業員数5〜20名・IT習熟度が普通——Chatworkが最安定
非IT系の中小企業でビジネスチャットを初めて導入するなら、Chatworkが最もリスクが低い選択肢です。
日本語UIのシンプルな設計・タスク管理内蔵・無料プランで始められる(メッセージ履歴40日)・国産なので安心感がある——この4点が中小企業への導入を成功させやすい理由です。「まず社内連絡をチャットに移す」という最初のステップとして最適です。
すでにMicrosoft 365を使っている会社——Teamsを使わない理由がない
Microsoft 365(Office 365)を契約している会社は、追加費用なしでTeamsを使えます。新しいツールを探す前に、まずTeamsを試してみてください。
WordやExcelとの連携・SharePointでのファイル管理・Outlookカレンダーとの統合など、すでに使っているMicrosoftサービスとシームレスに繋がります。費用面で他のツールと比較する必要がありません。
飲食・小売・建設・介護など現場スタッフが多い業種——LINE WORKS一択
スマートフォンが主な端末で、ITに詳しくないスタッフが多い業種にはLINE WORKSが圧倒的に向いています。
「新しいツールの操作を覚えさせるのが大変」という悩みを持つ会社は多いですが、LINEを使ったことがある人なら説明なしに使えるLINE WORKSは、そのハードルをほぼゼロにします。フリープランで30名まで無料なのも、小規模の現場チームには使いやすいです。
IT系・スタートアップ・外部ツール連携を重視——Slack
エンジニアや外部ツール連携を多用する会社にはSlackが最有力です。GitHub・Jira・Notion・Zoomなど、開発・プロジェクト管理ツールとの連携の豊富さはSlackが業界トップです。
ただしIT習熟度が低い社員が多い会社には向きません。「使いこなせる人と使いこなせない人で差が出る」ツールです。
Google Workspaceユーザー——Google Chatを追加費用なしで活用
GmailをビジネスメールとしてGoogle Workspaceで使っている会社は、Google Chatを追加費用なしで使えます。チャット機能自体の完成度はSlackやTeamsに劣りますが、Gmailやドライブとの連携の手軽さは他のツールには出せない強みです。
導入を成功させるための3つのポイント
ツールを選んだ後、定着させるために必ずやるべきことを整理します。
移行期間を設けてメールとチャットを並行しない
「チャットを始めました。でも急ぎの場合はメールでも連絡ください」——これが定着失敗の入り口です。
移行日を決めて「この日以降の社内連絡はチャットのみ」というルールを作ることが、最も効果的な移行方法です。並行期間を長くすればするほど「どちらも確認しなければならない」という二重管理になり、チャットへの移行が進みません。
チャンネルの命名ルールを最初に決める
チャンネル(グループ)の名前ルールを最初に決めないと、同じような名前のチャンネルが乱立して「どこに投稿すればいいか分からない」という状態になります。
シンプルなルールの例として「部門名-用途(例:営業-日報、全社-お知らせ、プロジェクト名-進捗)」という命名規則を最初に決めて全員に共有することをおすすめします。
1週間後に「使えているか」を必ず確認する
導入して1週間後に全員に「使えているか」「困っていることはあるか」を確認してください。この確認を省くと、「実は使い方が分からないまま放置していた」という人が出てきます。
特に年配のスタッフや現場スタッフは「分からない」と言いにくい傾向があります。1対1で確認するか、簡単なアンケートを取る方が実態が見えやすいです。
まとめ——まずは無料プランで全員が使えるかを試す
5ツールを比較しましたが、最終的な選び方のポイントをまとめます。
IT系・外部連携重視→Slack、Microsoft 365ユーザー→Teams、シンプルさ重視・非IT系→Chatwork、現場スタッフが多い業種→LINE WORKS、Google Workspaceユーザー→Google Chatという使い分けが基本です。
迷ったらまずChatworkの無料プランかLINE WORKSのフリープランで全員が使えるか試してみてください。「使えないスタッフが出た」なら別のツールを検討する、「問題なく使えた」なら有料移行を検討する、という順序が最もリスクが低いです。
完璧なツールを探して比較に時間をかけるより、まず使い始めて現場の声を集める方が、正しい選択に早くたどり着けます。
- 自社のスタッフのIT習熟度を確認して、今日紹介した基準で1つのツールを選ぶ
- 選んだツールの無料プランに管理者が登録して、まず5名以内で試験運用してみる
- 1週間後に「全員が使えているか」を確認して、使えていなければ理由を聞いて対策する
